2019.11.07

RENAULT PRESSE #93 NEW ARRIVAL:メガーヌ R.S.に、より本格的なスポーツ走行に特化した待望のトロフィーが登場


  • Renault Presse #093, NOVEMBER 2019 Words by Hiromune Sano
  • メガーヌ R.S.に、より本格的なスポーツ走行に特化した
    待望のトロフィーが登場

  • メガーヌ R.S.に待望の「トロフィー」が登場。
  • 既存のモデル「メガーヌ R.S.」と新しい「メガーヌ R.S. トロフィー」という
  • 2グレードのラインアップに強化された。
  •  トロフィーの名を冠するメガーヌのバリエーションが日本で初登場したのは2005年8月に遡る。2012年登場のメガーヌ 3 R.S.は、前年の2011年6月17日に独ニュルブルクリンク北コースで量産FF車最速タイムを更新(ちなみに、それ以前のレコードホルダーもメガーヌ 2のR.S.だったのだが)。その新記録達成車のDNAを受け継いだメガーヌ R.S. トロフィーを国内30台限定で発売したのが、日本での始まりだった。

     このようにルノー・スポールがモータースポーツの技術を生かして開発するR.S.モデルの中にあって、「トロフィー」とはさらに特別な意味をもつ存在なのだ。R.S.は用途や嗜好に合わせて「シャシースポール」と「シャシーカップ」という2種類のサスペンションを用意するのが通例だが、トロフィーはサーキットや限界をうかがうような本格スポーツ走行におけるドライビングプレジャーの向上を目的に、さらに走りのパフォーマンスを追求したR.S.モデルである。

     先代のメガーヌ 3 R.S.ではあくまで限定モデルというポジションだったトロフィーも、最新型メガーヌ R.S.では弟分のルーテシア R.S.同様に、正式なカタログモデルとしての追加である。


  • よりアグレッシブなレース走行に耐えうるメガーヌ R.S. トロフィー。
    コーナリングレスポンスとロードホールディングはサーキットレベルに。
    (写真の車両は、左:メガーヌ R.S. トロフィー、右:メガーヌ R.S. です。)


  • タイトコーナーでは卓越した俊敏さ、高速コーナーでは確かな安定性を発揮。
    日常の走行にも新鮮な感覚と安心感をもたらす。


  •  一目で分かる特徴はボディカラーだ。既存のR.S.と新登場のトロフィーともに用意されるカラーは3色ずつで、パールホワイトの「ブラン ナクレ M」とメタリックグレーの「グリ チタニアム M」という2つの定番カラーは両モデル共通。一方で、残る1色があえて両モデルそれぞれ独自の専用カラーとなるのがなんとも興味深い。メガーヌ R.S.の専用色はもちろん「オランジュ トニック M」で、その鮮烈なメタリックオレンジは新型メガーヌ R.S.とともに世に出た。しかし、今回のトロフィーではそれは設定されず、かわりにR.S.の伝統カラーといえるメタリックイエローの「ジョン シリウス M」がトロフィー専用色となるのだ。

     これまでのR.S.とは別次元の快適性や高級感、そして実用性を両立したメガーヌ R.S.には新設定カラーの鮮やかなオランジュ トニック M。ある意味でR.S.伝統の鋭い走りを追求したトロフィーには伝統のジョン シリウス M。このように、両モデルの専用カラーは各モデルのキャラクターを体現しているともいえる。

     さて、そんな注目のメガーヌ R.S. トロフィーだが、シャシーチューニングは本国でいう「シャシーカップ」が基本となる。具体的には、標準のメガーヌ R.S.(=本国のシャシースポール)に対して、スプリングや減衰力、フロントスタビライザーを強化。さらにハイグリップ路でのトラクション性能を引き上げるトルセン®LSDを装着して、軽量化と冷却性能に効果的なバイマテリアルフロントブレーキもつく。


  • 精悍なフロントフェイスと力強くアグレッシブなプロポーション。
    比類なきパフォーマンスとデザインの見事な融合に期待が高まる。


  •  ……と、ここまで読んでいただいてお気づきのように、新しいトロフィーのシャシーチューンは今年2月に100台限定販売された「メガーヌ R.S. カップ」とほぼ共通である。ただし、コンセプトカー‘Renault Sport R.S. 01’に触発された専用デザインの19インチホイールやスリットが刻まれたブレーキディスクローターなど、初搭載される装備も多い。

     しかし、トロフィーのトロフィーたるゆえん……はやはりエンジンだろう。定評ある1.8L直噴ターボには、高温・高負荷な環境でフリクションロスを低減させる効果がある、セラミックボールベアリングを採用したターボタービン、状況に応じて排気バルブを自動開閉させるアクティブエキゾーストシステムというルノー・スポールの技術の蓄積を生かした新たな装備を採用した。これに合わせたエンジン制御とすることで、エンジンスペックは標準のメガーヌ R.S.比で21ps、10〜30Nmアップの300ps、400〜420Nmまで引き上げられた。最高出力で300ps、最大トルクで400Nmという大台を達成したメガーヌ R.S.は史上初である。さらに嬉しいのは、パドル操作による電光石火の変速スピードを誇る「電子制御6速AT(6EDC)」と、自分の手で操る喜びと軽量化がメリットとなる「6速MT」と、トランスミッションに2つの選択肢が用意される点だ。


  • 19インチアロイホイールはメガーヌ R.S. トロフィー専用デザイン。
    コンセプトカー‘Renault Sport R.S. 01’からインスパイアされた。


  • トランスミッションは6速MTと電子制御6速ATの2種類。
    どちらもメガーヌ R.S. トロフィーのエンジンパフォーマンスを最大限に引き出す。


  •  これらのメカニズムに加えて、フロントシートは滑りにくいアルカンタラを用いたRECARO製バケットシートとなり、フロントのF1ブレードには‘TROPHY’のデカールが装着されるなど、新型メガーヌ R.S. トロフィーには、先代メガーヌ 3 R.S.やルーテシア R.S. トロフィーで好評だった数々のディテールも受け継がれている。


  • スポーツドライビングのためのコックピット。メガーヌ R.S. トロフィーには
    アルカンタラのRECARO製フロントバケットシートを標準装備。


  • フロント下部に配された‘TROPHY’ロゴデカールも
    メガーヌ R.S. トロフィー専用のデザインだ。


  •  価格はメガーヌ R.S. トロフィー EDCが4,990,000円*1、同MTが4,890,000円*1。標準のメガーヌ R.S.の4,481,000円*1の40〜50万円高となるが、高度な装備内容を考えれば、十分に抑えたプライスに設定されている。ただ、誤解してほしくないのは新型トロフィーが既存のメガーヌ R.S.の単純な上位モデルでは決してないことだ。市街地からロングドライブ、ワインディングからサーキットまであらゆる場面で高度な走行性能を示すメリットはどちらも変わりない。そのうえで、よりオールラウンドな性能と快適性を持つのがメガーヌ R.S.、そのオールラウンド性能の一部をより本格的な戦闘力や純粋な速さに振り向けたのが新しいトロフィーということだ。

     このモデルは、両グレードを試乗するなど、納得いくまで吟味することをおすすめする。そうやってあれこれ考える時間もまた、すこぶる楽しいクルマ趣味の一部である。

  • 佐野 弘宗 Hiromune Sano
    モータージャーナリスト

  • 1968年新潟県生まれ。大学卒業後、現ネコ・パブリッシングに入社。カーマガジン編集部を経て独立。主な執筆先は週刊プレイボーイ(集英社)、エンジン(新潮社)、ニューモデル速報「○○のすべて」シリーズ(三栄書房)、webCG、オートカージャパン、webスポルティーバ、carview!など。

*1 メーカー希望小売価格、消費税10%含む。

※掲載情報は2019年11月時点のものです。


Renault MEGANE R.S. / メガーヌ ルノー・スポール

 

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