2023.07.13

ルノー・アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッドに乗り「art de vivre」を知る もっともっと走りたくなる

  • 2023.07.10 歴史と環境と国民性が育む“ルノーらしさ”の原点を探る

バカンスの国フランスで育まれたルノー。クルマでの長距離移動を安全・快適に楽しみたい人々にとって、ルノーはどんな存在なのか。CセグメントのクーペSUV「アルカナ」に追加設定されたマイルドハイブリッドモデルのステアリングを握ると、その答えがだんだんみえてきた。

  • キーワードは「art de vivre


  • 2022年、ルノーは日本における販売台数の記録を更新した。同時に、日本で最も売れているフランス車のブランドもルノーとなった。これはとても興味深いトピックだ。というのも日本全体をみると新車の販売台数は4年連続でマイナスであるから。しかも軽自動車の割合が年々増え、いまや新車販売台数の約4割を軽自動車が占めるようになっている。


    • 202212月に発売された「ルノー・アルカナ」の新グレード「R.S.ライン マイルドハイブリッド」。1.3リッター直4ターボエンジンと、BSGと呼ばれる補助モーター、12Vリチウムイオンバッテリーで構成されるマイルドハイブリッドシステムの採用がセリングポイントだ。


    もうひとつ付け加えると、2022年は日本で売れ筋の「ルノー・カングー」がモデルチェンジの端境期で、売り上げに貢献していない。こうした状況にあって、なぜルノーが販売台数を伸ばしたのか? 「ルノー・アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」を題材に、ルノーが人気を集めている理由について考えてみた。


その理由のひとつは、間違いなくデザインだろう。ただしアルカナを見るとわかるように、派手に盛った造形ではないし、「どけどけー!」と押し出しの強さを強調しているわけではない。どちらかというシンプルで、控えめなエレガンスを感じさせる。

こうしたデザインの背景には、フランス的なものの考え方があるように思える。数年前に、『フランス人は10着しか服を持たない』という本がベストセラーになったことをご記憶の方も多いだろう。この本は、パリにホームステイしたカリフォルニア出身の女子大生の視線でつづられている。彼女の目には、フランス的なライフスタイルが実に新鮮に映ったのだ。



  • なだらかに傾斜したクーペスタイルのフォルムが「アルカナ」の特徴。写真の外装色は「ブルーザンジバルM」で、これを含め「R.S.ライン マイルドハイブリッド」には全4色のボディーカラーが設定される。


  • 「ロザンジュ」と呼ばれるひし形のエンブレムをフロントグリル中央に配置。「Cシェイプデイタイムランプ」を組み込んだフルLEDヘッドランプがルノーブランドの最新世代を象徴する。


そして、フランス的なライフスタイルを表現するキーワードとして登場するのが、「art de vivre(アール・ド・ヴィーヴル)」という言葉だった。英訳すれば「art of life」、「暮らしの芸術」と日本語に直訳するとちょっと堅くなるけれど、難しいことではない。


「暮らしの芸術」とは、たとえばお気に入りの食器をしまい込まずに日々の食卓で使ったり、テーブルに花を飾ったり、靴や洋服はメンテをしながら長く愛用するといったことだ。自分らしく丁寧に暮らすことで、毎日の生活に喜びを見いだすのが「art de vivre」なのだ。

ルノーの各モデルは、超高級車やスーパースポーツというわけではなく、日々の生活をともにするクルマだ。そして、ルノー各車の内外装が繊細かつ丁寧にデザインされている背後には、「art de vivre」が存在するように思える。



  • レッドのアクセントが目を引く18インチの「シルバーストーン」アロイホイールに、215/55R18サイズのタイヤを組み合わせる。今回の試乗車両には「クムホ・エクスタHS51」タイヤが装着されていた。


  • 「R.S.ライン マイルドハイブリッド」のボディーサイズは、先に登場した「E-TECHハイブリッド」と共通。なだらかに傾斜したクーペスタイルのフォルムがエクステリア上の特徴となる。


  • 市街地と高速道路の二刀流


  • ルノーが好まれるもうひとつの理由に、どんなシチュエーションでも活躍する、ということがあげられる。たとえばこのアルカナR.S.ライン マイルドハイブリッドは、市街地だと乗り心地が良好で静か。洗練された“都会派”だ。いっぽう、高速道路に乗ると、力強いパワートレインと速度が上がるほどに安定感を増す足まわりによって、どこまでも遠くへ行けそうなわくわくした気分になる。

    つまり、シティーコミューターとグランドツアラーという、ふたつの顔を持っている。そしてこの特性はアルカナだけでなく、ルノーの全モデルに共通する。たとえばコンパクトな「トゥインゴ」や「ルーテシア」であっても、高速クルーズは得意科目だ。たくさんの荷物が載るカングーは大柄に見えるけれど、ボディーの四隅が把握しやすいし、取り回しがいいから狭い駐車場も苦にしない。



    • 「アルカナ」には「CMF-B」と呼ばれる最新世代のプラットフォームが使用されている。これはルノーが主導し、アライアンスパートナーである日産、三菱との3社によって共同開発されたもので、Cセグメントモデルにも対応する高い多様性が特徴だ。


    • レッドの差し色でスポーティーにデザインされたコックピット。「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」には、フルハイブリッドモデルにはないシフトパドルが備わる。


ルノーの各モデルがふたつの顔を持っている理由は、フランスをドライブしてみるとよくわかる。まずパリ市内ではいまだに石畳の路地が残り、ここを滑らかに走るには、猫科の動物のように、しなやかに伸び縮みする足腰が不可欠である。石畳の路地は、サスペンションを鍛える道場なのだ。また、凱旋(がいせん)門を中心としたラウンドアバウト(環状交差点)では車間距離の短い接近戦が展開されるから、ボディーの四隅が把握しにくいクルマでは怖くて走れない。

そしてバカンスの季節になると、ラウンドアバウトをぐるぐる回っていたクルマが、一斉に郊外を目指すようになる。フランス人がなにより大切にしているのがバカンスで、人と荷物でぱんぱんになったクルマがオートルート(フランスの高速道路)を駆け抜けていく。バカンスに限らず、オートルートの発達したフランスでは、都市間の移動手段としてクルマが一般的だ。だからフランスのクルマには、市街地と高速道路の二刀流が求められるのだ。



  • 最高出力158PS、最大トルク270N・m1.3リッター直4ターボエンジンと、同5PS、同19.2N・mBSG(補助モーター)、そして12Vリチウムイオンバッテリーで構成される「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」のパワートレイン。


  • 力強いパワートレインと、速度が上がるほどに安定感を増す足まわりが快適な高速移動をサポート。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式を採用する。


  • 最高峰の舞台で走りを磨く


  • これは私見であるけれど、ルノーが販売台数の記録を更新した理由は、初めてルノーに乗る人にとって間口が広いいっぽうで、マニアにも支持されているからではないだろうか。

    冒頭に記したようにデザイン性が優れているから、街で見かけたあのカッコいいSUVに乗りたいと思ったらそれがアルカナだった、というケースもあるだろう。また、このアルカナR.S.ライン マイルドハイブリッドは、ワインディングロードでアクセルペダルに力を込めると、スポーツカー顔負けのファン・トゥ・ドライブを感じさせてくれる。だから自動車専門誌を愛読するようなマニアにもウケる。

    ルノーのファン・トゥ・ドライブは一朝一夕で成立したものではなく、長い時間をかけて醸成したものであることは、知っておくべきだろう。世界で初めてグランプリの名を冠した自動車レースは、1906年にルマンで開催された第1AFCグランプリ。AFCとはフランス自動車クラブのことで、この最初のグランプリを制したのがルノーだった。



    • パリ市内には、石畳の路地がいまだに多く残る。ここを滑らかに走るには、しなやかに伸び縮みする足まわりが不可欠。「アルカナ」はこうした欧州の道によって鍛えられている。


    • ルノーのファン・トゥ・ドライブは、長い時間をかけて醸成されたもの。1906年にルマンで開催された第1回AFCグランプリにも参戦し、見事勝利を収めている。写真は1952年のルマン24時間レースに出走した「ルノー4CV」。


  • その後も、ルノーはモータースポーツに情熱を注いできた。1970年代にはF1に初めてターボエンジンを持ち込み、革命を起こした。1980年代には「ルノー・サンク ターボ」が、ターボ車として初めてWRCFIA世界ラリー選手権)で優勝を果たしている。モータースポーツの最高峰で得た技術と経験を市販モデルに生かす伝統は現在も引き継がれ、「ルノー・メガーヌR.S.」はドイツのニュルブルクリンク北コースで、何度も量産FF車世界最速の記録を更新している。

    一目ぼれの対象にもなるし、知れば知るほど奥深さが理解できる対象でもある。この両面があるから、ルノーは数字を伸ばしたと推察する。



    • 1980年代には「ルノー・サンク ターボ」でWRC(FIA世界ラリー選手権)に参戦。同車はWRCで初勝利を挙げたターボモデルとしてその名を歴史に刻んだ。


    • 石畳の道を行く「アルカナ」。欧州の古い街並みはもちろんのこと、近代的な都市のなかにあっても、不思議とアルカナのデザインはマッチする。


  • 自由と平等と友愛

アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッドをドライブしていると、ここまで記したルノー車の美点がわかりやすく表現されていることがわかる。さり気ないけれど飽きずに長く愛することができそうなフォルム、そしてパワーと燃費を両立するハイブリッドシステムは、走りを極めるルノーのDNAを愛する人、合理性を重んじて燃費にこだわる人、バカンスで遠くを目指す人、だれもが恩恵を受ける類いのものだ。

最後に書いておきたいのは、ルノーはシートの掛け心地やハンドルの手応えなど、タッチやフィールと呼ばれるものがやさしいということだ。エピソードをひとつ紹介したい。

ルノーが2代目のカングーを開発した際に、フランスの郵便局にあたるLa Posteの協力を仰いだという。一日に何十回も乗り降りをしたり、サイドブレーキを操作したりする局員の意見を取り入れて、シートやサイドブレーキのレバーを開発した。結果として、乗り降りを繰り返しても腰が痛くならないシートや、何度操作しても疲れないサイドブレーキが完成した。



  • 幾重にも連なる山並みを眼下に一望できる展望公園で。ここに至るワインディングロードでアクセルペダルに力を込めると、「アルカナR.S.ライン マイルドハイブリッド」はスポーツカー顔負けのファン・トゥ・ドライブを感じさせてくれた。


  • レザーとスエード調の表皮で仕立てられたフロントシートには、電動調整機構とヒーターが備わる。コックピットは人間工学に基づき視認性・操作性を考慮してデザイン。ドライバーが運転に集中し、運転する楽しみが深く味わえる環境に整えられている。


ここにルノーという企業の姿勢が表れていると思う。超高級車ではないと書いたけれど、腰が痛くならない快適なシートは、超高級車だけでなくどんなクルマでも平等に備えるべきで、ルノーはこうしたところに手を抜かないのだ。

だれもが快適に移動する自由をもたらしてくれるアルカナR.S.ライン マイルドハイブリッドのハンドルを握っていると、「自由・平等・友愛」というフランス共和国のスローガンが頭に浮かんでくる。



  • 後席の左右幅は1453mmで、足元スペース、頭上まわりとも十分な空間を確保。背もたれにはセンターアームレストと60:40の分割可倒機構が備わり、多彩なシートアレンジが可能だ。


  • 運転支援システムの充実も「アルカナ」の特徴。アダプティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)やレーンセンタリングアシスト(車線中央維持支援)、アダプティブエマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)、360度カメラなどが標準で装備される。


(文=サトータケシ/写真=郡大二郎/制作=webCG


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