2022.01.12

ルノー・アルカナ、どんなクルマ? 重大ミッションを試乗で読み解く

  • TEXT・大谷達也 PHOTO: ルノー
    Produced by AUTOCAR JAPAN for RENAULT JAPON




      • ルノー・アルカナ。多くのかたにとっては、まだ謎に包まれているかも知れません。試乗しました。



      • アルカナの重大ミッション


      アルカナは全長およそ4.6mと扱いやすいサイズのSUV。ルノーのコンパクトSUVといえばすでにキャプチャーがあって、こちらはヨーロッパを中心に根強い人気を誇っているけれど、ハッチバックとSUVの中間的なキャラクターのキャプチャーに対して、アルカナはより本格的なSUVのプロポーションに仕上げられている。



      しかも、ルーフ後半が徐々に下がるクーペ・スタイルを採用。手頃なサイズ感といい、スタイリッシュなデザインといい、いまもっとも旬なセグメントにジャストミートしているモデルだ。

      ただし、アルカナは単純なヒット作狙いではなく、もっと重要なミッションを担っている。

      ルノーの新しいハイブリッドシステム「Eテック」を広く世に知らしめるというのが、その大切な役割である。

      いま、ヨーロッパ車のハイブリッドシステムはプラグイン・ハイブリッドとマイルドハイブリッドに二極分化している。

      プラグイン・ハイブリッドは、外部電源で充電することでEVのようにも走れる高度なシステムで、燃費と排ガスの低減に大きな効果があるけれど、コストもかかるからコンパクトカーへの採用は難しい。

      いっぽうのマイルドハイブリッドは、ヨーロッパの最新排ガス規制をクリアするのが主な目的で、コスト的には有利だけれど燃費低減効果は限定的。



      というわけで「コンパクトカー向きで省燃費にも大きな効果のあるハイブリッドシステム」というのは、少なくともヨーロッパ車に関していえばこれまで存在しなかった。

      そしてEテックは、そんな世の中に風穴を開けるために誕生したハイブリッドシステムといえるだろう。



      • Eテックは「いいとこどり」


      Eテックの仕組みは、難しいようで簡単ともいえるし、簡単なようで難しいともいえる。

      まず、コンパクトカーにも積めるようにするには、エンジンもモーターも小さいほうが好ましい。

      そして小さなエンジンやモーターを効率的に使うには、変速機を用いるのが有利だ。

      そこでEテックはエンジン用に4段、モーター用に2段の変速機を設けている。これが第1の特徴である。



      Eテックの第2の特徴は、この変速機をうまく活用することによって、シリアルハイブリッドにもパラレルハイブリッドにも使えるようにした点にある。

      シリアルハイブリッドは、簡単にいえばモーターが主役のシステムで、エンジンは発電機の役割に徹する。

      ちなみにモーターの効率が高いのは低速域なので、シリアルハイブリッドは必然的に低速向きとなり、高速燃費をよくするのは難しい。

      いっぽうのパラレルハイブリッドはエンジンが主役のシステムだから、高速燃費の改善には効果があるけれど、低速域での燃費改善は相対的に薄かった。

      つまり、どちらも「帯に短し、たすきに長し」だったのだ。

      ところがEテックは低速域でシリアルハイブリッド、高速域でパラレルハイブリッドに切り替えることで、幅広い速度域で大きな燃費改善効果を実現した。

      いわばシリアルとパラレルの「いいとこどり」といえる。



      3番目の特徴は、動力の断続に摩擦クラッチではなく、レースの世界で一般的なドグクラッチを使ったことにある。

      金属の歯車同士が直接噛み合うドグクラッチは伝達効率が高いうえにダイレクト感を生み出すうえでも有利。

      ただし、動力をスムーズに断続するのは苦手なので、Eテックでは、スターター・ジェネレーターと呼ばれるモーターでエンジン・スピードを同調させてから断続をおこなうという独創的なアイデアが盛り込まれている。

      しかも、これだけ複雑な仕組みを果たすギアボックスを極めてコンパクトに作り上げたというのがEテック第4の特徴。

      こうして、低速域から高速域まで燃費改善効果が高く、走りがスポーティで、しかもコンパクトカーにも搭載できるまったく新しいハイブリッドシステムが完成したのである。



      • アルカナ、乗ってみると?


      今回は発売前のアルカナを富士スピードウェイ内の特設コースで試乗できたので、その第一印象をリポートしよう。

      まず、低速域では基本的にシリアルハイブリッドとして機能するので、エンジンはかからず、ほとんど無音のまま滑らかに走り始める。

      モーターの特徴としては、先ほども述べた低速域で効率が高いという特徴があるが、それにくわえてレスポンスがエンジンよりも良好で、しかも低速域でのトルクが圧倒的に太いというキャラクターを持つ。

      このため、発進時にアクセルペダルを踏み込むと、ガソリン・エンジンでは期待できないほどのレスポンスと力強さで「グイッ!」と背中を押されるような感覚が味わえる。

      それは、おそらく10分の1秒単位の出来事だし、発生トルクにしてもガソリン・エンジンと比べてケタ違いに大きいわけでないけれど、このモーター特有の力強さを愛して止まないレーシングドライバーが、わたしの周囲には何人もいる。

      おそらく彼らは、微妙なスロットルワークから「自分がいつでも引き出せる余裕トルクがそこにある」ことを感じ取って満足するのだろう。

      そして彼らも、低速域ではシリアルハイブリッドと機能するEテックをきっと気に入ってくれると、わたしは確信している。



      そのまま加速していくと、だいたい40-50km/hくらいでエンジンは始動。この辺からEテックはパラレルハイブリッドに移行するようだ。

      ただし、エンジンがかかってもアルカナの車内は驚くほど静か。それは、キャビンでエンジン音がほとんど聞こえないだけでなく、このクラスにしてはロードノイズが例外的に小さいことも利いていることだろう。

      それにしてもアルカナのエンジンは排気量1.6Lの自然吸気で、最高出力も94psと限られている。しかも、ギアボックスはいまどきあり得ない4段変速。

      そんなスペックが信じられないほど走りが力強く、そして柔軟なのは、パラレルハイブリッドとしてモーターが随時エンジンをサポートしてくれているから。

      しかも、スロットルオフではエンジンがすぐに停止してコースティングに入るし、減速時には回生ブレーキにより運動エネルギーを電気エネルギーに変換してため込んでくれるので、燃費面でも有利なはずだ。



      フランス車といえば、かつてはコンパクトカーでもこぞってディーゼル・エンジンを積んでいた。それがすっかり姿を消したのは排ガス規制が強化されて高度な後処理システムが要求され、コスト的にコンパクトカーでは割にあわなくなったのが原因。

      以来、高速域でも燃費効率が高いコンパクトカー用の技術は存在しなかったが、Eテックはそれに代わるテクノロジーとして大いに注目されるだろう。


      • 気になる後席の頭上空間は


      フランス車好きであればやっぱり乗り心地のことが気になるが、アルカナはこの点でも十分期待に応えてくれるはずだ。

      最近のルノーは、軽快感を優先して弾むような足回りにするモデルが増えているように思う。

      それでも、ハーシュネスの遮断は良好で路面からゴツゴツ感を伝えないので不満はないけれど、アルカナは古くからのルノー・ファンであればよくご存じの、あのソフトで「ノターッ」とした乗り心地が味わえる。



      もちろん、ロードホールディングのよさも健在だから、クルマの姿勢や路面の不整にかかわらず安定したハンドリング特性を発揮してくれる。この点でもアルカナはかつてのルノーにそっくりだ。

      いっぽうで、ちょっとハンドルを切っただけで「ググッ」とノーズの向きを変えるような不自然で過激な設定ではなく、いつでも穏やかな反応を示してくれるので安心そのもの。

      ちなみに、ハンドルを切った量とクルマが曲がっていく角度の関係を示すステアリングゲインは穏やかでも、ハンドルを切ったあとにどれだけ素早く反応するかを示すステアリングレスポンスは鋭いので、クルマの進路を早めに、そして微妙に調整するのはもっとも得意とするところのひとつ。

      ルノーでロングドライブをしても疲れにくいのは、こんな特性も効果を発揮しているはずだ。

      クーペSUVのスタイリングだと、後席のヘッドルームがどうしても心配になるけれど、身長171cmのわたしが前後に腰掛けた範囲でいえば、リアシートでも頭上には7-8cmのスペースが残っていたほか、前席のシートバックからわたしのヒザまでの間隔は20cmを越えていたので、後席でも楽々とヒザが組める。





      また、容量1.2kWhのリチウムイオンバッテリーは荷室の床下に搭載されているが、それでもラゲッジルームは480Lと十分な容量を誇る。

      特に、この荷室は奥行き方向に余裕があるので使い勝手はよさそうだった。

      ルノーが本気で開発したハイブリッドシステムを積んだコンパクト・クーペSUVのアルカナは2022年中に日本でも発売される見通しだ。

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